【ジェンダー・ステロタイプについてお話ししましょう】11月27日

小学校の先生に英語授業についてアドバイスを差し上げる仕事をしています。今月拝見した授業案の中に、6つの職業の英語を扱う優れた5年生対象の記録がありました。語彙を教える前に、子どもに「お家の人の職業は何か」問いかけることで「職業」というコンセプトを明確にしていました。 学級の子どもをよく知っている担任教諭ならではの授業で、とても良いと思いました。 授業のメイン・アクティビティは「3 Hint Game」で、ターゲットの英文を幾つか使って、任意の職業を出題し・当てます。

1点だけ改良してくださいとコメントしたのは絵カードでした。dentist, pilot, farmer, police officer, zookeeper, teacherの6種類の絵カードをコピーライトフリーのイラストを使って作成されたのですが、全て男性のイラストだったのです。半分の3枚を女性のイラストにしてくださいとコメントを差し上げました。

私ならば、pilot, farmer, zookeeperを女性にすると思います。

節子画伯の絵です(^ ^)

ELT出版の仕事をしていると、1ページに描かれている人物が・全てCaucasian(白人)ではいけない・有色人種を入れる・男女比をできるだけ同じにするというように現実世界を反映することを厳しく求められます。

ジェンダーについて考えると、思い込みのステロタイプを私たちの頭の中から消す必要があることに気づきます。次のストーリーをお読みください。

A man and his son had been to a party. They had had a very good time. They were driving back together. It was raining and the road was wet.

A cat was crossing the road. The car skidded on the wet road. It crashed into a tree. The man was killed. His son was seriously injured. Someone called for an ambulance. It rushed him to the hospital. He was immediately taken into surgery. The surgeon saw the boy and said “My son! My son!”

さて、問題です。

Why did the surgeon say, “My son! My son!”

このストーリーは、私は20年以上前に、あるワークショップで知り、それ以降は個人指導でも、大学でも活用しました。

なぜ外科医は救急車で運ばれてきて重体の少年を見て「息子よ!」と言ったのでしょうか?

外科医は女性で、少年の母親だったからです。わかってみると単純なのですが、多くの人が「the surgeon:外科医」という単語を目にした瞬間に、男性の救急医をイメージし、そのイメージから逃れられないので、正解にたどり着くことができません。

次回はジェンダー・フリーの単語についてお話ししましょう。

コメント (3)
  1. よりたん より:

    こんばんは。紹介してくださったストーリーは、随分前にラジオで聴いたことがあります。最後の場面で「え~??」となりました。20年ほど前、「ジェンダーを英語でディスカッションする」講座を数年受けていたことがありましたが、自分自身、ステレオタイプの意識が刷り込まれていることに気が付きました。子どもたちに授業をする際は、絵カードや英文にも気を付けなければいけませんね。話は変わりますが、最近、ある漫才で「桃太郎」の話を聞いて笑ってしまいました。コンプライアンスに気を付けてリメイクするのですが、昔話は男女の役割も決まっていたなぁと思いました。次回「ジェンダーフリーの単語」のお話も楽しみにしています。

  2. 相馬恵美子 より:

    こんにちは。ジェンダーについてのディスカッションはこれからもっと増えるでしょうね。イラストを見てもheなのか、sheなのかよくわからない場合もあります。子どもたちには、自分の思った方で表現して良いことにしています。職業の紹介は、テキストなど見ると男女の比を配慮してイラストを選んでいると感じます。「ジェンダーフリーの単語」にも興味があります。LGBTQ+などと言われ始めると、heでもsheでもない代名詞が出てくるのでしょうか?上の外科医の話は、どこかで聞いたことがありました。

    1. 外山節子 より:

      よりたん、恵美子さん、コメントをありがとうございます。iMacが村井電機病院に入院していて、コメント返信を入れられませんでした。今、バックアップの小さいMacで書いています。

      お二人ともこのお話を知っていらしたのはさすがです。かなり昔にICU受験の高校生に教えてあげたのですが、入学後の最初の頃の授業でこのお話が使われたと言っていました。多分、ステロタイプに気づかせる良い例なのでしょう。

      私は子どもを育てるにも、授業でも、「男らしく」「女らしく」という言葉を使わないようにしました。韓国ドラマの時代劇でも、サイムダンやチャングムのようにがんじがらめの身分制度の中で「女でもできる」と壁を破っていった女性像が好きです。

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