團十郎襲名披露公演を見てきました。2020年初夏に行われる予定だった襲名披露がコロナで延期になり、今年の11月12月に実現しました。一つ置きに空席を作ったり、大向こう、客席での会話・飲食も禁止したり、と苦しい時代を経て、今はほぼ全席を販売し、幕間に客席で「黙食」が許可されていますし、3階のてっぺんから公式大向こうさんが「成田屋~!」と要所でかけて、コロナ前の雰囲気が少し戻っています。
2022年12月7日(水)、4時開演の夜の部を見ました。児太郎さんの後援会でお世話してもらった「お切符」は2列目。一番上手よりのブロックだったので、花道や舞台中央を見るためにずっと左を向いていまして、昨夜から首がガチガチです。でも歌舞伎見物をずっとためらっていたところ、児太郎さん後援会が案内を送ってくださって、背中を押してもらったような感じですので、どんなお席でもありがたいことです。
成田屋さんご贔屓と見られるハイソな方たちが大勢で、着飾った女性の大軍を久しぶりに目にしました。最近はウクライナの戦況や電力事情のことばかり頭にあったので、クリスマスツリー柄の帯を締めたお洒落なマダムとか、コートもバッグもミンクで、お着物に合わせてスワロフスキーちりばめマスクをしたマダムとか、日本にはこういう階層がいるのね、と感心いたしましたわ。
襲名祝幕は二種類で、その1つのUNIQLO寄贈のゴジラ2頭が銀座で吠えている絵柄はセンスあります。
演目は、口上、團十郎娘、助六の3つ。口上でも、助六でも、猿之助が盛り上げました。
口上は、襲名する役者の大先輩が口火を切って仕切ります。先代團十郎のいとこにあたる松本白鸚さんが予定されていたのですが、11月半ばから体調を崩して休演。そこで、次の大御所の左團次さんが代役を務め「高うはござりまするが、口上なもって、、、」と始まりました。左團次さんは高齢で以前から台詞を言う時に首が振れるのですが、それが度を増しているようでしたし、松本白鸚というべきところ、ちょっと言葉に詰まって「市川の白鸚さん」とおっしゃったりして、少々心配になりました。幸四郎さんの挨拶の後を受けた猿之助は、「ここで喋りすぎると、助六で言うことがなくなる。私の挨拶は、幸四郎兄と以下同文!」と笑わせました。
海老蔵の息子觀玄(かんげん)が新之助を襲名して初舞台なので、挨拶をしました。9歳なのに立派です。成田屋の子どもに生まれるというのは大きな宿題・宿命を背負って生きることですが、潰されることなく育っているようです。
十三代目團十郎は唯一無二の人です。朗々と挨拶したのち、恒例の「睨み」を見せました。團十郎が睨んで見せると観客が無病息災になるという江戸時代には信仰に近い習わしだった芸で、睨んだまま微動だにしない海老蔵に幕がかかりました。良いものを見たという気分でした。
團十郎娘は舞踊演目で、「近江のお兼」とも呼ばれ、私は七之助の出し物で見たことがあります。市川ぼたんは11歳です。11歳の少女が高度で体力の要る演目を踊るなんて。團十郎は娘を歌舞伎座の舞台で踊らせたかったのでしょう。そして、ぼたんは立派に踊り抜きました。晒布(新体操のリボンの幅広)を操る踊りは、一人で踊るだけでなく、先輩役者や若い衆相手の立ち回りの中で、演技しながら振ります。若い衆がトンボをするきっかけを出したりするわけです。小さい身体からスターのオーラが出ていました。ぼたんちゃんがまっすぐ成長することを祈ります。
助六は江戸歌舞伎の全ての要素が詰まった荒事・勧善懲悪の娯楽劇です。花魁の衣装は豪華だし、玉三郎の揚巻、彌十郎の意休、助六の兄である白酒売は勘九郎と、主役級が揃ったキャスティングです。花魁道中を先導する茶屋廻りという小僧に、團子や染五郎が出ているのは、襲名披露でなければあり得ない大サービスです。助六は、本当は高貴な身分なのだけれど、復讐のために街でヤンキーをしています。毎晩あちこちで喧嘩をふっかけて相手に刀を抜かせ、源氏の宝刀を探しています。イケメンでキップが良いので、どこに行ってもモテモテという設定です。猿之助は吉原の通人で、「入れごと」と言って幕内、個人情報、時事など何でもアドリブで言って客席を笑わせる役です。「股~くぐれ」と仁王立ちの助六に、袂から体温計を出して熱を測ってみたり、ファブリーズで消臭したり。白酒売には「じゃんけんしよう。最初はパー。」と言ってテレビで演じているお笑い芸人のギャグをたっぷり見せるなど、大暴れしてから花道に行きます。「やっと歌舞伎座も元に戻りつつあります。皆様、これからも歌舞伎をご贔屓お願いいたします。」と言い、主役を「食って」去りました。
團十郎、勘九郎、猿之助の三人が舞台に乗っている図は眼福で、この人たちがこれからの歌舞伎界を引っ張っていくのだなと実感しました。
せの字~!
團十郎襲名披露公演へのお江戸お出まし、そして大舞台の様子が映像のように浮かぶ解説ありがとうございました♥襲名祝幕も大迫力。いかに団十郎襲名の重責、歌舞伎界あげての大イベントということ理解しました。日程調整できず切符も取れませんでしたのでとてもありがたいですლ(╹◡╹ლ)せの字は團十郎襲名の歴史的瞬間の目撃者ですね。
えの字〜!コメントをありがとうございます。やっと行けました。歌舞伎座。8月の納涼歌舞伎を諦めて以来、計画してもコロナ感染者が急増すると行けなくなるし、とネガティブ思考になっていました。でも、今回は児太郎さん後援会のお世話で行けました。
昼の部を見ていないのですが、新之助が大役をこなしているようですし、勘九郎さんが道成寺を踊っているので、いつか映像が放送されますようにと願っています。
えの字は、宮尾登美子著「きのね」をお読みになったことありますか?私は歌舞伎大先輩おきぬさまに教えてもらって読みました。成田屋がモデルの小説ですが、ほぼドキュメントと言ってよい作品です。もしまだお読みでなければ、冬休みの読書におすすめでござりまする。
読んでみます‼冬休みの推薦図書ありがとうございます
えの字〜!宮尾登美子さんの作品が全て好きというわけではないのですが、「蔵」は新潟が舞台なので、往時の越後に思いを馳せ、ふむふむと頷きながら読みましたざます。(^ ^)
はい、宮尾登美子さんというと私にとり「蔵」です!NHKドラマで檀ふみと鹿賀丈史が出演していた時のシリーズ覚えてます。
えの字〜!さすがです。あのドラマは再放送で見ました。厳しい冬の様子がしっかり描かれていました。越後言葉もしっかり演じられていると思いました。こうなると、「きのね」が楽しみですね!
團十郎さんの御父上の歌舞伎を見たことがあります。友達に誘われての観劇でした。確か勧進帳だったと思います。
節子先生の、現代風の説明は楽しかったです。今の歌舞伎は、歌舞伎を知らない人にも楽しめるようになっているのでしょうか。コロナを風刺したような内容もあったりと面白いですね。
ゆきこっち〜!コメントを有難うございます。
先代團十郎さんの舞台をご覧になったのですね。羨ましい。わたしは2012年8月に歌舞伎と出会いましたので、先代團十郎も勘三郎も実際の舞台で見るには間に合いませんでした。
歌舞伎は世代交代の時代を迎えています。コロナが収束して、気軽に見物に行けるようになると良いです!
節子
『きのね』上下巻読み終わりました!主人公”きのねの光乃”の目を通して歌舞伎宗家一門の代々続く芸の伝承、名跡を継ぐことの壮絶な世界を垣間見、華やかな舞台、役者のみならず裏方支える人間模様の機微、一門に関わる多くの人々、バックヤードの下々の方々含め宮尾登美子さんが描く女性、この世界に引き込まれました。宮尾さんの執筆に対する情熱はすごいですね。歌舞伎の演目を観る目が変わりそうです。
えの字〜! 読了おめでとうございます。何人もの人生を疑似体験したような感じがしませんか?ほぼドキュメントと言える内容なので、出版に際して、宮尾さんに圧力がかかって怖い思いもなさったそうです。この本を読んで、先代團十郎さんの人柄は、きっとお母様(「きのねのおみつ」さん)譲りなのだと思いました。会話のことば使いにも惹き込まれますよね。
「きのね」読了後、三津五郎さんの「歌舞伎の愉しみ」をお読みになると、そこで言及されている團十郎さんのこと、荒事の解説など、す〜っと頭と心に入ってきますよ!
おせつ
一門の十八番や演目、台詞のくだりも出てきて勉強になりました。ご本推薦してくださって本当に感謝でございます。次は「歌舞伎の愉しみ」ですね!
えの字〜!
「歌舞伎の愉しみ」三津五郎語り、長谷部浩聞き書きです。新書版があるので、それをお勧めしようと思いました。様々な演目の解説があって、私は何度も読み返しています。文体が三津五郎さんのお話し口調なので、とても読みやすく、ウェビナーを受講しているような感覚です。ネット書店では、なぜか中古本しか見つけられません。実際の書店の歌舞伎本のコーナーには定番で置いてあるのではないかと思います。
せの字
せの字~!
ありがとうございます♥参考書になる本ですね。手元に置いておきたくなる一冊。本屋さんによると出版元から絶版になっているとのこと。ただ、もっと大きな書店での歌舞伎コーナーを探してみます。なければアマゾンの中古か図書館で借りることにいたします。
えの字〜!コメントをありがとうございます。
絶版になっている?三津五郎さんが亡くなって、この本の版権は巳之助に継承され、文庫本が出た時に、「これを買うとみっくんに印税が入る」と思って買ったのは、、、何年前だったのでしょう。良書なのに。。。
中古が入手できたら、お手元に置いておくことをお勧めいたしまする〜!