古稀日記 2025年5月19日 【ORT Traditional Tales New】

Oxford Reading Tree Traditional Talesは、レベルごとに単語数、英語レベルが統一され、decodableといってフォニックスの学習をしている子どもが自分の力で読めます。2012年刊行で、10レベル40冊には、「ジャックと豆の木」「赤ずきんちゃん」「シンデレラ」など有名なお話が含まれています。

このシリーズに新たに9レベル36冊がOxford Reading Tree Traditional Tales Newとして2025年刊行になり、日本でも発売が始まりました。各レベルの4冊パックを単品で購入、または、全36冊が入っているSingle Packを一括購入することができます。

私はレベル6の「A Husband for a Mouse(ねずみの嫁入り)」とレベル7の「The Bowl Princess(鉢かずき姫)」を執筆しました。この仕事の始まりは、2023年3月のことで、イギリスから執筆オファーのメールを受信しました。

I hope you don’t mind me contacting you but got your email from our Japan office as he was recommending you as an author who might be interested in my project. We are looking for a broad range of authors, not just authors from diverse backgrounds, but authors who are international, as we are hoping the these new titles will be more global rather than Eurocentric.

世界各国の伝承話を、その国の著者が執筆するという企画で、日本人の私へのオファーは、Level 6の「ねずみの嫁入り」でした。喜んで引き受けました。

元のお話をそこなわずにレベルに適した英語で子どもが楽しんで学習するストーリーを書くのは楽しい仕事でした。私はページごとに簡単なスケッチを描いて、場面のイメージと英語textを同時進行して作業しました。イギリスのcommission editorのFさんと週に何度もメールをやりとりしました。昼夜反対の国なので、夜メールを送っておくと、翌朝返事が届いていて、おとぎ話のように仕事がはかどり、Fさんとは会ったことも無いのに、メールでたくさんおしゃべりしてすっかり仲良しになりました。これには、私を推薦してくださったOUP JapanのKさんも驚いていました。

著者は、時代背景やキャラクター設定などを決められたフォーマットで書き、ページごとの場面を全て英語で描写して提出します。マニュスクリプト執筆という作業です。第1稿、第2稿、第3稿、と書いては修正しを繰り返す、何千語の英作文。ふぅ。24ページの絵本に半年を費やしました。その後も、製作が進行すると、OUPが採用したイラストレーターの手になるdraftを何度もチェックして意見を送りました。

「ネズミの嫁入り」の最終マニュスクリプトを上梓すると、もう1冊書きませんか?とオファーがありました。2023年9月のことでした。

I am wondering whether you would like to write another story for us? We have had an author pull out and so I have my last title to commission. I also had an author try a Japanese story at a lower level and it did not fit, so I would love to be able to use the story. The level is one higher than you had before, so all sounds are allowed and it might be easier to write it. The story is ‘The bowl princess’. Let me know what you think and I can send you more details if you are happy to write.

The Bowl Princessは、「鉢かずき姫」です。ううむ。これは引き受けなくてはなりません。すぐにOKして、「浦島太郎」「かぐや姫」「鶴の恩返し」「笠地蔵」はどうかしら?と尋ねたのですが、全世界で販売するためには、様々な規制があり、結局「鉢かづき姫」になりました。ハッピーエンドなので、編集者自身がとても気に入っていたのです。

ちなみに、「浦島太郎」はagingについて触れるのでinternational readersに向かない、「笠地蔵」と「かぐや姫」のようにstories about magicを販売するのが難しい国がある、そして、鳥の話は現時点で多すぎるので「鶴の恩返し」は入れられない、ということでした。

そこで、編集者一押しの「鉢かずき姫」の執筆にとりかかりました。「ねずみの嫁入り」と同様、数ヶ月にわたって様々な段階の仕事を重ねました。2024年の初めに上梓すると、さらにまた別にシリーズの1冊のオファーがありました。これについては、まだ社外秘なので、古稀日記に書くのは先になります。

コメント (1)
  1. よりたん より:

    せつこ先生、OUPのTraditional Talesについて詳しく教えてくださりありがとうございます。テキストだけではなく、絵本の執筆から出版に至るまでも編集者との厳しい推敲を重ねて完成されていくのですね。『「浦島太郎」はagingについて触れるのでinternational readersに向かない、、』とは興味深いです。考えてみれば、昔話には結構残酷な箇所があったり、いわゆる「コンプライアンス」に違反する内容があるかもしれませんね。世界の子ども達が自分たちの英語力で世界の伝承話を読めるなんて素晴しい!ライフワークとしてがんばってください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です