【BOOKS:Traditional Tales】 2023年12月2日

Oxford Reading Tree (ORT) は、イギリスの大部分の小学校で国語、つまり英語の教材として採用されています。Kipperという男の子の家族のお話がメインでよく知られていますが、「Explore」「InFact」など異なったコンテンツのシリーズも出版されています。「Traditional Tales」という世界中のおとぎ話シリーズもあります。1~9レベルあり、子どもが自力で読めるdecotable、つまりフォニックスの知識で読める絵本です。

今年3月のことでした。ORT Traditional Talesの編集部からメールが届きました。「フォニックスリーダーを書ける人を探していたら日本のORT担当者があなたを推薦しました。More global than Eurocentricなシリーズにするために、様々な国のお話を出版する企画です。」という趣旨のメッセージ。調べてみると、今まで日本人の著者はいないのです。これは受けなくっちゃ!とプロジェクトに飛び込みました。

すぐに編集部から2つの候補が送られてきました。じっくり読んで1つを選びました。「○○○の嫁入り」(社外秘)です。お話が決まると、レベル6の執筆に必要な資料が送られてきました。使える単語、単語数、1センテンスの語数のようにテクニカルな注意事項と、文化考証です。宗教、魔術、暴力を描くことはできません。これは、English TimeやBeehive/Buzzの著者として頭に入っています。問題は、子どもが読めるdecodableにすることです。これについては、一旦ストーリーを書いて、後で同義語の代替案を考えます。

まずはお話をじっくり読みました。色々なバージョンがあるので、できるだけ多種類を読みます。こういう時頼りになるのがぴろこ先生とYumiko先生です。小学校の図書館にある昔話の絵本を調べて資料作りに大協力してくださいました。

全部で24ページですが、1ページは中表紙で、24ページはRetell the Storyというアクティビティで編集部が作成します。つまり22ページでお話を展開するのです。

最初にtaskを送りました。Story arcというシノプシスと、2ページ目と3ページ目のtextを書いて送り、これで、この著者が全体を書けるかどうか判断するわけです。合格したので、契約書を交わし、スケジュールが決まりました。8月にFirst draftを送ります。本文だけでなく、reference visualsも送ります。

そのフィードバックを受けて9月にSecond draftをチェックします。

私はEnglish Timeでも、Beehive/Buzzでも、storyを書いたのですが、その時簡単なスケッチも描きました。ビジュアルがないとストーリーの流れが自然になりませんし、各ページのart instructionsというイラストレーターへの詳しい描写を書く(英作文)ためには確実なイメージが必要です。

レベル6の絵本の語数は500。そのために書いた、character description, art instruction等々は8000語を超えました。資料には写真も添えました。勝手に送るのではなくてフォーマットされたファイルが送られてきて、そこにタイプインするのです。終わって送り出してOKがでた時は本当に嬉しくてほっとしました。編集者Fさんとの数十通のメールのやり取りが一段落しました。

ORT Traditional Talesは4冊セットなので、2024年に新しいセットが発売になります。とても楽しみです。

と、ここでチャンチャンと終わるところなのですが、なんと、9月末にもう一冊書きませんか?とお誘いがありました。タイトルは「○○○○姫」(社外秘)で、「レベル7だから、たいていの単語が使えるし、あなたの仕事ぶりはよくわかったから、受けてくださればすぐに進めてもらいたい。」と甘い誘惑です。

ううむ。それでは、私が書きたいお話にしてもらえないかしら?と返信して、「浦島太郎」「かぐや姫」「笠地蔵」「鶴の恩返し」のシノプシスを送りました。すると、浦島太郎にはaging issueという難があり、かぐや姫と笠地蔵のmagical elementsが受け入れらない国があり、鶴の恩返しは鳥のお話で、シリーズには既に鳥のお話が多すぎるのです、と残念な見解が返ってきました。やれやれ。

そんなわけで、今私は「○○○○姫」のお話を書いています。年内にFirst draft、年明けにSecond Draftというスケジュールなので、この絵本も2024年に発売になると思います。

発売になれば社外秘ではなくなるので、もう少し詳しいbackstage episodesを書きたいと思います。

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